
日本のAR・XR市場規模と成長予測|国内調査データの読み方
国内AR/XR市場の規模、デバイス普及状況、主要企業の動向を整理し、WebARの実務における位置づけを解説します。
日本のAR(拡張現実)市場は、実証実験の段階を越えて、研修や製造、不動産、小売などの実務で使われる段階に入りました。
矢野経済研究所の調査によると、国内の法人向けXR(VR/AR/MR)コンテンツ市場は2024年に264億6,500万円を記録し、2030年には444億2,200万円に達する見込みです。2024年の推計値から2030年の予測値までの年平均成長率は約9%です。AR単独ではなく、VR・MRも含む市場の数値です。
また、国内のスマートフォンOSシェアはiPhoneとAndroidがほぼ拮抗しており、ARの企画や設計では双方への配慮が欠かせません。本記事では、国内の調査データをもとに市場の動向と端末事情を整理し、WebARが実務で選ばれる理由を解説します。
国内XR市場規模の推移
国内のXR市場を把握する際は、ハードウェアとコンテンツ、さらに法人向けと消費者向けを区別して確認する必要があります。
法人向けXRコンテンツ市場の動向
矢野経済研究所が発表した「XR市場動向調査」における市場推移は以下のとおりです。
| 指標 | 2024年(推計) | 2030年(予測) | 対象範囲と備考 |
|---|---|---|---|
| 法人向けXRコンテンツ市場 | 264億6,500万円 | 444億2,200万円 | 事業者売上高ベース(BtoB受託制作およびサービス運用) |
| XRデバイス市場 | 45万6,000台 | 87万台 | メーカー出荷台数ベース(2030年予測の内訳: HMD 52万台/ARスマートグラス 35万台) |
同調査では、製造業やエネルギー分野での安全教育や技術継承、不動産や自動車販売の商談ツールとして実用化が進んでいる点が挙げられています。
なお、上記のコンテンツ市場には一般消費者向けのARゲーム内課金や広告配信費は含まれていません。市場規模の数値を引用する際は、対象範囲の定義を確認することが重要です。
調査の対象をそろえて比べる
市場予測を比較するときは、調査時点、ARとVRの範囲、ハードウェアを含むか、法人向けか消費者向けかを確認します。異なる範囲の数値を並べても、その差が市場の成長や減速を示すとは限りません。企画書には調査名、対象年、対象範囲と、実績・推計・予測の区別を併記してください。
AR配信に影響する国内の端末シェア
ARコンテンツを届ける対象機器として、スマートフォンの普及状況とOSの比率を考慮する必要があります。
スマートフォンの普及状況
NTTドコモ モバイル社会研究所の2026年1月調査によると、携帯電話所有者におけるスマートフォンの比率は98.3%です。大多数の生活者がAR表示に対応しうる画面付き端末を所持しています。
iOSとAndroidの国内比率
長年「日本はiOSが過半数を大きく占める」と言われてきましたが、近年の調査では比率が拮抗しています。
| 調査主体 | iPhone比率 | Android比率 | 調査時期 |
|---|---|---|---|
| MMD研究所 | 48.3% | 51.4% | 2025年9月 |
| MMD研究所 | 49.0% | 50.8% | 2026年2月 |
| NTTドコモ モバイル社会研究所 | 44.6% | 55.4% | 2026年1月 |
MMD研究所の調査は18〜69歳が対象で、全年齢の国内比率を直接示すものではありません。年齢層による偏りもあります。MMD研究所の2025年9月調査では、20代女性の約81%がiPhoneを利用している一方、シニア層ではAndroidの割合が高くなっています。
AR形式の選定方針
利用者の端末が分かれているため、片方のOSのみを対象とした設計では閲覧者が限定されます。
- iOS(Safari等): Quick Lookを起動し、USDZ形式のモデルを表示
- Android(Chrome等): Scene ViewerまたはWebXRを起動し、GLB形式のモデルを表示
全般的な利用を想定する場合、iOS用のUSDZとAndroid用のGLBの両方を準備する必要があります。Web標準の<model-viewer>コンポーネントを使用すると、アクセスした端末に応じて呼び出し形式を振り分けられます。ファイル形式の詳細や変換時の注意点は、GLBとUSDZの違いと使い分けを参照してください。
なお、3Dモデルのブラウザ表示とARモードの起動は端末要件が異なります。また、GLBからUSDZへの自動変換では、マテリアルの質感やアニメーションが一部再現されない場合があるため、事前に実機での表示確認が必要です。
国内AR主要プレイヤーの動き
国内のAR開発環境は、単機能の受託開発から、配信や分析を含むプラットフォーム事業への統合が進んでいます。
STYLYによるpalanのグループ化
2025年11月、空間レイヤープラットフォーム「STYLY」を展開する事業体が、WebAR制作ツールを提供する株式会社palanの全株式を取得し子会社化しました。その後、2026年5月には「STYLY WebAR」が発表されています。
これにより、Webブラウザ向けの施策からスマートグラス向けコンテンツまで、段階的に拡張できる運用環境が整いつつあります。
国内の主要事業者
| 企業名 | 主な事業領域 |
|---|---|
| palan(STYLYグループ) | ブラウザ向けAR作成ツール「palanAR」、観光・回遊向け「AR Maps」 |
| STYLY | 空間制作・配信プラットフォーム、XR空間表現およびグラス向け展開 |
| Graffity | 複数人参加型ARエンターテインメント、AR企画開発 |
| MESON | 空間コンピューティング領域のUX設計、実証実験支援 |
| Pretia Technologies | AR空間認識技術、位置連動型コンテンツの開発支援 |
| クラウドサーカス | WebAR作成サービス「LESSAR」の提供 |
単発のキャンペーン開発にとどまらず、コンテンツの差し替えやアクセス状況の把握が可能な管理基盤の採用が重視されています。
WebARとアプリ型ARの選定基準
店頭販促や観光地案内などの用途では、ブラウザで動作するWebARが広く使われています。
| 比較項目 | WebAR(ブラウザ起動) | 専用アプリ型AR |
|---|---|---|
| 体験開始の手順 | 二次元コード読み取りやリンク遷移のみ | アプリストアからの検索・ダウンロードが必要 |
| 開発・管理コスト | 比較的抑えやすい | iOS/Androidの個別開発や審査対応が必要 |
| 表現可能な機能 | 実寸大の3D配置、簡易アニメーション | 高度な環境認識、遮蔽処理(オクルージョン)、常駐機能 |
| 主な適用領域 | 商品確認、パッケージ連動キャンペーン、観光案内 | 空間計測、精密作業指示、ゲーム |
アプリのダウンロード工程を挟まないWebARは、その場ですぐに体験してもらいたい企画に適しています。業務上のメリットについては、アプリ不要ARの5つのメリットで解説しています。ツールの詳細な機能比較は、WebARツール徹底比較を確認してください。
今後の市場展望
調査データと業界動向から、国内のAR利用は次の3点に集約されます。
- 実務ツールの標準化: 見た目の新奇性を狙う施策から、研修や製品確認など実用性を重視した導入が定着しています。
- 制作環境の整備: 3Dデータの制作工程が効率化され、中小規模の事業者でも導入しやすい環境が整いつつあります。制作手順については、生成AIによる3Dモデル生成を参考にしてください。
- 両OS対応の標準運用: 日本国内の端末事情から、iOS(Quick Look)とAndroid(Scene Viewer)を同時にカバーする配信設計が一般的な基準となっています。
よくある質問
日本のAR市場規模はどれくらいですか?
矢野経済研究所のデータによると、国内の法人向けXRコンテンツ市場は2024年に264億6,500万円、2030年には444億2,200万円に達すると予測されています。ただし、ハードウェア売上や一般消費者向けゲーム内課金を含むかどうかで算出値が異なるため、数字を確認する際は対象の定義に注意してください。
日本国内のAR制作で優先すべきOSはどちらですか?
2026年時点の調査では、国内のスマートフォンOS比率はiPhoneが約49%、Androidが約51%と拮抗しています。若年層はiPhoneの比率が高い傾向にありますが、幅広い利用者を対象とする場合は、USDZ(iOS)とGLB(Android)の両方に対応した配信設計を行ってください。
WebARとアプリ型ARはどのように使い分けますか?
店頭POPやイベント、ECサイトなど「利用者にすぐ体験させたい」場面には、インストール不要のWebARが向いています。一方で、長時間の操作や複雑な空間トラッキングを伴う業務用途には、専用アプリの開発が適しています。
調査会社によってデバイス市場の予測が異なるのはなぜですか?
対象とする機器の範囲が異なるためです。矢野経済研究所がARスマートグラスを含む広い範囲で増加を予測しているのに対し、IDC Japanはヘッドセット型の専用端末を中心に集計しているため減少傾向を示しています。
実機でWebARを確認する手順
自社サイトや商品パッケージでARを試す場合、まずは標準的な3Dモデルを用いて各OSでの挙動を確認することをおすすめします。
Pitat-ARの無料プランでは、1つの個人スペース内で最大3つのプロジェクト、合計10個までのGLBファイルを管理できます。
- 対応形式: GLB(1ファイルあたり最大20MiB)
- サーバー処理: GLBからUSDZへの自動変換
- 配信形式: 表示用URL、二次元コード、iframe埋め込みコードの発行
手元のGLBファイルを登録し、手持ちのiPhoneおよびAndroid端末から実際の配置精度や表示速度を検証してみてください。
参考文献
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