
8th Wall終了後の移行ガイド|2027年2月28日で配信停止、残り約6ヶ月でやるべきこと
8th Wallは2026年2月28日に編集・エクスポートを終了し、公開中の体験も2027年2月28日で配信停止・データ削除されます。エクスポートの窓は既に閉じているため、多くの企業は作り直しが必要です。オープンソース版にSLAMが含まれない件も含め、移行先の選び方と実務の段取りを公式FAQの記載に沿って整理しました。
TL;DR(3行要約)
- 期限は2027年2月28日: 公開中のAR体験はこの日で配信停止になり、プロジェクトデータも削除される。本記事公開時点で残り約6ヶ月
- エクスポートの窓はもう閉じている: 書き出しができたのは2026年2月28日まで。間に合わなかった場合、ソースコードは取り出せず、作り直しになる
- 「オープンソース化されたから安心」は誤解: MITライセンスで公開されたエンジンにSLAM(ワールドトラッキング)は含まれない。床に物を置く体験を自前で動かすには、別ライセンスのバイナリが要る
商品の3D表示・AR設置が目的なら、移行はもっと簡単に済みます。 Pitat-ARはGLBをアップロードするだけでAR体験URLとQRコードを発行します。3アセットまで無料。 → 無料で試す
結論: 締め切りは2027年2月28日、そして猶予は思ったより少ない
8th Wall(Niantic)は2026年2月28日にプラットフォームとしての営業を終えました。ログインも編集も新規公開もできません。それでも街のポスターやEC商品ページに貼られたAR体験がまだ動いているのは、公開済みのものだけが読み取り専用で延命されているからです。
その延命も2027年2月28日で切れます。公式FAQは、この日以降にホスティングを停止し、残ったプロジェクトデータを保持ポリシーに従って削除すると明記しています(8th Wall Migration FAQ)。開発者データと課金データも同様に消えます。
厄介なのは、猶予の中身が「移行の準備期間」ではないことです。編集もエクスポートもできない状態で、ただカウントダウンだけが進みます。手を動かせる作業は8th Wallの外にしか残っていません。
何がいつ止まったのか

| 時期 | 何が起きたか / 起きるか |
|---|---|
| 2025年11月 | 事業終了を発表 |
| 2026年2月28日 | ログイン・編集・新規公開・エクスポートが終了。同日、MITライセンスのエンジンフレームワークを公開 |
| 2026年3月〜2027年2月 | 公開済みの体験だけが読み取り専用で稼働。編集も書き出しもできない |
| 2027年2月28日 | ホスティング停止。以降、URLはコンテンツを返さない。プロジェクトデータ・課金データを削除 |
出典: 8th Wall Migration FAQ、Goodbye 8thwall.com. Hello 8thwall.org.
太字にした2つの日付の意味はまったく違います。2026年2月28日は資産を取り出せる最後の日でした。2027年2月28日は顧客が体験を開けなくなる日です。前者を逃した企業にとって、後者までの時間は救済期間ではなく、作り直しの期間です。
まず確かめるべきは「エクスポート済みかどうか」の一点
移行の難易度は、2026年2月28日までにコードを書き出したかどうかでほぼ決まります。社内のリポジトリとストレージを探して、次のどれに当たるかを判定してください。
Buildable Code Export がある場合 ― 自前で動かせる
ソースコード、アセット、ビルド設定、XRランタイム、そしてエンジンバイナリまで含まれた完全な書き出しです。自社サーバーやVercelなどに載せれば、そのまま動きます。移行というより引っ越しに近い作業です。
ただし全機能が動くわけではありません。公式FAQによれば、Niantic Spatial VPS、Lightship Maps、ハンドトラッキングはクラウド側のサービスに依存していたため、書き出したコードには含まれず、オフラインでは動きません。この3つを使っていた体験は、その部分だけ別の実装に置き換える必要があります。
Code Export しかない場合 ― 参照用のスナップショット
バックアップと参照のための書き出しで、そのままビルドして動かす想定のものではありません。3Dモデル、テクスチャ、シーンの構成といった資産は回収できるので、ゼロからよりはかなり有利です。実装は作り直しになります。
何も書き出していない場合 ― 資産を目視で回収する
エクスポート機能は2026年2月28日で止まったので、今からコードを取り出す方法はありません。できるのは、まだ生きている公開URLから回収できるものを回収することだけです。ブラウザの開発者ツールでネットワークタブを開き、読み込まれている3Dモデル(.glb)やテクスチャのURLを控えて保存しておきます。2027年2月28日を過ぎるとこれもできなくなります。
元の3Dモデルの制作を外部に発注していたなら、その制作会社にマスターデータが残っている可能性が高いので、先に問い合わせるほうが早いです。
オープンソース版で「そのまま動く」と考えると、たぶんつまずく
8th Wallは終了と同時に一部をオープンソース化しました。この事実だけが伝わって、「無料で使い続けられる」と受け取られている場面をよく見かけます。実際の内訳を見ると、そう単純ではありません。
公開されたものは2種類あります。2026年2月28日にMITライセンスで公開されたエンジンフレームワークには、コアのアーキテクチャに加えてフェイスエフェクト、イメージターゲット、スカイエフェクトが含まれます。もう一方は2026年1月に配布が始まったエンジンバイナリで、こちらのライセンスは限定利用に絞られています。
分かれ目はSLAMです。カメラ映像から空間を認識して、床や机の上に3Dモデルを固定する技術のことで、ワールドトラッキングとも呼ばれます。ARらしい体験の中核と言っていい機能ですが、MITライセンスの側には意図的に含まれていません(Open Source | 8th Wall)。SLAMを使えるのはバイナリ配布版だけで、そちらは改変もリバースエンジニアリングも禁止され、配布時には著作権表示が要求されます。
| MITライセンス版 | エンジンバイナリ | |
|---|---|---|
| SLAM(ワールドトラッキング) | × | ○ |
| フェイスエフェクト | ○ | ○ |
| イメージターゲット | ○ | ○ |
| 改変・再配布 | 可 | 不可 |
| VPS / Maps / ハンドトラッキング | × | × |
つまり「オープンソース版に乗り換える」という判断は、社内にWebフロントエンドの開発体制があり、ライセンスの条件を読み込んで運用できる場合の選択肢です。マーケティング部門が代理店経由で運用していた体験を、そのまま引き取れるものではありません。
移行先は「元の体験が何だったか」で決まる

8th Wallは守備範囲が広く、後継をひとつに決められません。作っていた体験の種類ごとに、現実的な移行先は変わります。
| 元の体験 | 移行先の考え方 |
|---|---|
| 商品を床や机に置いて見せる(サーフェス配置) | <model-viewer> ベースのSaaS、または自社実装。日常運用が中心ならSaaSが楽 |
| ECの商品ページで3Dを回して見せる | <model-viewer> の埋め込み。移行難易度は最も低い |
| 顔に何かを重ねる(フェイスフィルター) | MITライセンス版のフェイスエフェクト、またはSnap Camera Kit for Web |
| ポスターや紙をかざすと動く(イメージトラッキング) | MITライセンス版のイメージターゲット、Zapworks |
| ゲーム性のあるインタラクティブ体験 | Zapworks、または自社開発。工数は素直に大きい |
| VPS・位置連動の体験 | Niantic Spatialの製品を継続利用するか、企画から練り直す |
商品を見せる用途に限れば、移行はむしろ簡単になります。8th Wallで作り込んでいたインタラクションが不要なぶん、GLBファイルさえ手元にあれば、アップロードするだけでURLとQRコードが出るところまで短縮できるからです。Pitat-ARはこの用途に絞ったサービスで、GLBからUSDZへの変換も自動で処理します(→WebARツール比較)。
逆に、顔認識やゲーム的な体験を作っていたなら、Pitat-ARは移行先になりません。そこは正直に書いておきます。<model-viewer> 系の仕組みは3Dモデルを見せることに特化していて、複雑なインタラクションは守備範囲の外です。
移行の段取り

作業そのものより、棚卸しで漏れるほうが事故になります。
まず、社内で公開中の8th Wall体験をすべて洗い出します。マーケティング部門が代理店経由で出したキャンペーン、営業資料に貼ったQRコード、商品パッケージに印刷されたコードまで含めて数えてください。印刷物に載ったQRコードは回収できないので、リンク先を差し替えられる状態にしておく必要があります。
次に、それぞれの体験について3Dモデルの原本がどこにあるかを確認します。ここが移行の実質的なコストを決めます。原本があれば載せ替えるだけですが、なければ作り直しになり、3Dモデルの制作から始めることになります。AI生成という選択肢も現実的になってきました(→AIで3Dモデルを生成する)。
そのうえで移行先を決め、新しい体験を作って、QRコードとリンクを差し替えます。差し替えの締め切りは2027年2月28日ですが、印刷物が絡むなら製造リードタイムを逆算してください。パッケージの刷り直しが必要なら、実質の締め切りは半年ほど手前に来ます。
最後に、旧URLからのリダイレクトを用意できるか検討します。8th Wallのドメイン側は制御できないので、自社ドメインを噛ませていた場合に限られますが、可能なら効果は大きいです。
よくある質問
Q. 8th Wallで公開中のAR体験は、今すぐ止まってしまいますか?
A. 2027年2月28日までは動き続けます。公式FAQでは、2026年2月28日時点で公開されていた体験は読み取り専用のまま稼働し、2027年2月28日以降にホスティングを停止すると案内されています。ただし編集はできないため、内容の更新が必要になった時点で実質的に使えなくなります。
Q. 今からプロジェクトのコードをエクスポートできますか?
A. できません。エクスポート機能は2026年2月28日で終了しています。今からできるのは、まだ稼働中の公開URLをブラウザの開発者ツールで開き、読み込まれている3Dモデルやテクスチャのファイルを個別に保存することだけです。これも2027年2月28日までの作業になります。
Q. オープンソース版を使えば、無料で今までどおり運用できますか?
A. 体験の種類によります。MITライセンスで公開されたエンジンフレームワークにはSLAM(ワールドトラッキング)が含まれないため、床や机に3Dモデルを固定する体験はそのままでは動きません。SLAMを使うには限定利用ライセンスのエンジンバイナリが必要で、改変や再配布は禁止されています。フェイスエフェクトとイメージターゲットはMIT側に含まれます。
Q. 移行にはどのくらいの費用がかかりますか?
A. 3Dモデルの原本が手元にあり、商品を見せる用途であれば、SaaSの月額費用だけで済みます。原本がなく作り直す場合はモデル1点あたり数万円から、インタラクティブな体験を再現する場合は開発費として数十万円以上を見込むことになります。費用の内訳はAR導入の費用相場で詳しく整理しています。
Q. 移行先はどう選べばよいですか?
A. 元の体験が何をしていたかで決まります。商品やモデルを見せることが目的だったなら<model-viewer>ベースのSaaSか自社実装、顔や画像の認識を使っていたならオープンソース版かSnap Camera Kit、ゲーム性のある体験ならZapworksか自社開発が候補です。選定の軸はWebARツール比較にまとめました。
Q. また同じことが起きないか心配です。どう避ければよいですか?
A. 完全には避けられませんが、依存の度合いは選べます。<model-viewer>のようにWeb標準に近くオープンな部品を土台にしておくと、特定の事業者が撤退しても実装ごと失われる事態にはなりにくいです。加えて、3Dモデルの原本を自社で管理しておくこと、そしてURLを自社ドメインで発行して転送を自分で制御できるようにしておくことが、実務上は効きます。
まとめ
期限は2027年2月28日、資産を取り出す窓は2026年2月28日で既に閉じました。今からの作業は、8th Wallの外で新しい体験を用意し、QRコードとリンクを差し替えることに絞られます。
最初にやるべきことは移行先の選定ではなく、棚卸しです。公開中の体験がいくつあり、それぞれの3Dモデルの原本がどこにあるのか。この2つが分かれば、移行が引っ越しで済むのか作り直しになるのかが決まり、必要な予算と期間も見えます。印刷物にQRコードを載せている場合は、刷り直しのリードタイムぶんだけ締め切りが手前に来る点に注意してください。
そして今回の件から持ち帰るべき教訓があるとすれば、機能の豊富さで基盤を選ぶと数年で消えることがある、という単純な事実です。次の選定では、継続性と、撤退されたときに何が手元に残るかまで見ておきたいところです(→2026年のWebARトレンド)。
商品の3D表示・AR設置が目的なら、移行は数分で終わります。 GLBファイルをアップロードするだけで、AR体験URLとQRコードを発行できます。 → Pitat-ARを無料で試す / 他ツールとの比較を見る


